成年後見制度とは

成年後見制度は精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)により判断能力が十分でない方が不利益を被らないように家庭裁判所に申立てをして、その方を援助してくれる人を付けてもらう制度です。

たとえば、一人暮らしの老人が悪質な訪問販売員に騙されて高額な商品を買わされてしまうなどといったことを最近よく耳にしますが、 こういった場合も成年後見制度を上手に利用することによって被害を防ぐことができる場合があります。

また、成年後見制度は精神上の障害により判断能力が十分でない方の保護を図りつつ自己決定権の尊重、残存能力の活用、 ノーマライゼーション(障害のある人も家庭や地域で通常の生活をすることができるような社会を作るという理念)をその趣旨としています。

よって、仮に成年後見人が選任されてもスーパーでお肉やお魚を買ったり、お店で洋服や靴を買ったりするような日常生活に必要は範囲の行為は本人が自由にすることができます。

成年後見制度の基本理念

日本は超高齢化社会に突入しており、認知症者数が300万人と言われているので、今後も利用者の数は増加していくと思われますが、近年の利用状況では少なすぎるといわれています。

そこで2016年4月に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が成立し、同年5月13日から施行されています。

2022年(令和4年)における成年後見関係事件の申立件数は合計で3万9719件、同年末時点の成年後見制度の利用者は約24万5000人にのぼり、 ここ数年は毎年5000~1万人以下のペースで増加していますが、ここ数年は新規利用件数の伸びが横ばいになっています。

男女別割合は、男性が約4割、女性が約6割となっており、男女とも80歳以上の利用者が最も多く、65歳以上の利用者は、男性では男性全体の7割以上、女性では女性全体の8割以上を占めています。

男女別割合の円グラフ/男性:約4割、女性:約6割

成年後見登記制度は、法定後見制度と任意後見制度の利用の内容、成年後見人の権限や任意後見契約の内容などをコンピューターシステムにより法務局で登記して、登記官が登記事項証明書を発行して情報を適正に開示することによって、判断能力の衰えた方との取引の安全を確保するための制度です。

以前は戸籍に記載されていましたが、プライバシーの保護や成年後見制度の使い勝手を考慮して成年後見登記制度が新たに作られました。

成年後見登記制度

本人や成年後見人から請求があれば法務局から登記事項証明書が発行され、これを相手方に示すことによって安全で円滑な取引ができることになります。

成年後見制度のメリットとデメリット

成年後見制度では「後見」類型が8割を占めています。

後見類型では本人は「判断能力を常に欠く状態にある」とされるため、後見人に本人は何もわからないと決めつけられて、本人の知らないところで勝手に決められてしまうという側面があるので、本人や親族が成年後見制度を使いたくないと思ってしまうケースが少なくありません

また、後見人には本人の財産管理に対する大きな権限が与えられているので、それを悪用して後見人が本人の財産を使い込んでしまうケースが見受けられるようになってきました。

その結果、裁判所が後見人の財産管理状況をこれまで以上に厳しくチェックするようになったため、成年後見制度は後見人になる親族にとっても使いたくない制度になっているという側面もあります。

よって、今後は後見人に全面的な権限が付与される「後見」類型から、本人が支援を必要とする部分に限定して権限が付与される「補助」類型を増やしていく運用に変更されるべきではないかと考えられています。