特別縁故者と内縁の相続|代襲相続と相続財産管理人の解説

特別縁故者と内縁の相続と代襲相続と相続財産管理人

相続人が全くいない場合、その被相続人(亡くなった人)の遺産はどうなってしまうのでしょうか?

相続人がいない場合は、遺産は最終的にはのものになります。

しかし、特別縁故者がいる場合は特別縁故者からの請求により、家庭裁判所がその者に遺産の全部または一部を分与することがあります。

特別縁故者とは

1. 被相続人と生計を同じくしていた者

2. 被相続人の療養看護に努めた者

3. その他被相続人と特別の縁故があった者

1.の代表的なケースは、内縁の配偶者や事実上の養親子です。

2.は献身的に療養看護に尽くした者で、親族的関係にある者や民生委員、職場の元同僚などが挙げられます。

親族や近親者として通常の交際をしていた場合は適用されませんが、特別縁故者は必ずしも人に限られず、老人ホームや市町村などでもよいとされています。

内縁の妻には相続権はありません。

いくら何十年もの間、故人と生計を同じくして事実上の夫婦のように暮らしていたとしても、法律上の相続権はありません。

しかし、例外があります。

それが借家です。

借地借家法では以下の条件を満たす場合に限り、借家の承継を認めています。

内縁の妻の借家の承継

1. 借家の建物が居住用であること

2. 賃借人が全く相続人なしで死亡したこと

3. 借家権を承継できるのは、同居している事実上の夫婦(養親子)の関係にあって届け出をしてないこと

この規定で注意が必要なのは、内縁関係の妻に「相続権」を認めているのではないというところです。

つまり、この規定は居住の場所を内縁の妻から奪わないようにしようという配慮にすぎないといえます。

言い換えれば、居住用の建物で相続人がいない場合に限って、借家権を承継できるに過ぎない規定といえます

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次は、養女との結婚の話です。

子宝に恵まれない夫婦がいたとします。

夫婦は熟慮した結果、妻の姪を養女にすることにしました。

その後、妻が病死し、妻の夫と亡くなった妻の姪(養女)との生活が始まりました。

男女の仲は奇想天外・・・夫と養女は超えてはいけない一線を越えてしまい、養女が妊娠してしまいました。

産まれくる子のために、2人は結婚しようと思い立ちましたが、そもそも亡くなった妻であった夫と妻の姪でもある養女は結婚できるのでしょうか?

養女との結婚の可否

1. 結婚できない

2. 結婚できる

3. 離縁すれば結婚できる

答えは3つのうちのどれでしょうか?

正解は1番です。

つまり、結婚できないわけです。

なぜなら、養親子間での結婚は民法で禁止されているからです。

であるなら、離縁すれば結婚できるのかという素朴な疑問がありますが、民法では養親子間では親族関係が終了した後でも、結婚することはできないと規定しているため、やはり結婚できません。

民法では道義上の配慮から親子関係の終了後も結婚を認めていないわけです。

したがって、上記のケースでは、どう転んでも結婚はできないということになります。

ところで、代襲相続という言葉をご存じでしょうか?

聞いたこともないという方も多いかと思われます

そういうわけで、代襲相続の説明を簡単にしたいと思います。

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たとえば、自分の父方のおじいちゃんが亡くなったとします。

おじいちゃんが亡くなれば、本来の相続人はおばあちゃん(おじいちゃんの妻)とその子(お父さん)になります。

しかし、おじいちゃんが亡くなる数年前に、自分のお父さん(おじいちゃんの子)が亡くなっていたとします。

そういった場合、お父さん(おじいちゃんの子)の子である自分が、お父さんに代わって相続人になります。

つまり、代襲相続とは被相続人(亡くなった人)が死亡するよりも前に、相続人となるべき人(推定相続人)が死亡等により相続権を失った場合に、その者(推定相続人)が受けるはずだった相続分を、同人の直系卑属(子や孫のこと)が承継することです。

代襲相続の根拠

1. 通常は子が親より長生きするのに、偶然の事情によって子が先に亡くなってしまった場合の不利益をなるべく避けるため

2. 相続には遺族の生活を保障するため

代襲相続は、漢字は難しいですが、公平の理念に基づく思いやりに満ちた制度といえます。

次は、相続財産の管理についてです。

遺産分割協議は相続人全員で行うのが原則ですが、各相続人が遠方に居住しているといった理由で、なかなか話し合いをすることができない場合があります。

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そういった場合に、相続財産の管理をどうするのかという問題があります。

たとえば、相続財産の中にアパートがあり、屋根が壊れてその修理が必要になった場合を例に挙げてみます。

相続するのか相続放棄するのかを決めるまでの期間は、故人が亡くなってから3ヶ月間ですが、この間は自分の財産と同じ程度の注意で管理をしなければいけないと決められています。

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よって、アパートの屋根が壊れて雨漏りをしていたりすれば、修理をしておく必要があります。

なぜなら、修理をしないことでアパートの価値が著しく減少すると、自分が相続放棄をした場合、次順位の相続人や故人の債権者などの利益を不当に害し、損害賠償請求をされることもあるからです。

もし、忙しくて自分で管理をすることができないような場合は、家庭裁判所に財産管理人を選んでもらうことができます。

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反面、相続することした場合は、上記のような管理義務はありません。

とはいえ、相続財産は相続人の共有となり、相続人全員が共同して管理することになります。

この場合、相続が開始した時点(故人が亡くなった日)から相続人の共有になるので、相続を放棄しないで単純承認するまでの管理費用やその後の管理費用は、共同相続人がその相続分に応じて負担することになります。

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現実的には、管理に要した費用は遺産分割のときに一緒に清算することが多いですが、遺産分割協議の前に相続分に応じた管理費用を各相続人に請求してもOKです。